トランペットのイメージとはどのようなものでしょうか。「きらびやかな音」「迫力のある大きな音」「透き通ったハイトーン」「オーケストラの花形」…
それぞれの人にいろんな印象があると思います。そのようなあこががれの音に到達するためには、どのような努力をすればよいのでしょうか。世界の超一流プレーヤーはどのようにして、その領域にいたったのでしょうか。
何時間も大きな音や高い音を吹いてもへこたれない筋肉質の唇、強靭な腹筋から生まれるスピードの早い息、大きな肺活量、そしてそれを実現させるための毎日の過酷な練習。。果てには、「外人のように大きな体格がないと無理なんだ。」「私は力がないし息もあまり吸えないから無理なんだ。」などの話まで飛び出します。本当にそうなのでしょうか…
このメソッドは私がレッスンの時に話したことをまとめたもので、目標に達するためのベーシックな方法が書いてあります。しかし、その方法を行う前にまず、トランペットに対する考え方を再度考察してみる必要があります。
音楽は、とても綺麗なp(ピアノ)で演奏される部分や、感動的なロートーンで演奏されるフレーズなどがあって、その後に続くff(フォルテッモ)や劇的なハイトーンが生きてきます。ffやハイトーンはその音楽の一部分です。
オーケストラなどの合奏体では、迫力のある重低音やきれいな中音域に支えられているからこそ、高音域のトランペットの音がきらびやかに聞こえます。そして、これらの音楽表現は、非常に繊細な技術によって支えられているのです。
まずは考え方をリセットしましょう。トランペット奏者の拠り所は、大きな音でもハイトーンでも無く、音色です。演奏するために必要なものは、力ではなく技です。
このメソッドがきっかけとなり、トランペットに対する考え方や技術がより良い方向へ向かい、トランペット演奏がとても楽しくなることを切に願っています。
なお、ここに記した譜面は私のレッスンの基礎となるものです。実際の個人レッスンでは、生徒の状態に合わせ、ここには載せていない譜面や市販されている他の練習曲集(アーバン・クラークなど)を併用する場合もあります。
もし他の指導者の方が生徒さんのレッスンでこのメソッドを使用したい場合、特に費用や許可などは要りませんが、できればこちらのお問い合わせフォームよりご一報ください。
世の中にはトランペットの奏法に関する本はたくさん出ていますが、それさえ読めばトランペットが吹けるようになると思う人はいないと思います。
難しい数学や法律学なども、優秀で熱心な指導者の助けがあれば別ですが、教科書から独学で学ぶのは難しい。心身の感覚が主要なテーマとなる事柄を、書物から学ぶのは不可能だと思います。
また、トランペットの一つ一つの技術の上達には毎日の練習の中から半年、1年というサイクルで習得して行くものがほとんどです。優秀な指導者に定期的に確認してもらうことを勧めます。一たび間違った方向で練習して、気が付かないまま長期間続けると、修正するのは大変な作業となってしまうからです。
この冊子は、長倉穣司先生がいろいろな人にレッスンで話した言葉をまとめたものです。すでにレッスンを受けた人には意味があると思います。レッスンを受けたことはないけど、興味はもっているという人には、是非、レッスンを受けてくださいと、お願いしたいです。