長倉穣司 (トランペット奏者) Webサイト

3-(3) 「必要最小限の力」のイメージ

リコーダーを吹くときのことを考えてみてください。息が漏れないように意識して唇をすぼめたり、大きな音や高い音を出すために、極端に息を強く吹き込んだり、体のどこかへそれ専用の力を入れるでしょうか。

音が出るとわかっているとき、意外に力は入らないものです。リコーダーは息を吹き込めば誰でも必ず音が出ますから、誰でも大きな力を使わないで音を出すことが出来ます。

むしろ、強い息をリコーダーに入れても、「ピー」と関係ない倍音が鳴るだけで、リコーダーは綺麗に鳴ってくれません。

トランペットもリコーダーと同じくらいの力の使い方、息の出し方で吹くことができます。

もちろん、特定の限界領域では違いもあるでしょうが、大部分の音域は多くの人が思っているよりもっと燃費よく吹くことができます。

リコーダー以外の例えとしては声帯があります。声は声帯の振動によって生まれますが、声を出すために声帯に意識的に力を入れているイメージがあるでしょうか?誰でも特に意識しないで、最小限の力で声をが出すことが出来ているのものです。唇の振動によって生まれるトランペットの音もそうあるべきなのです。

トランペットで音を出すのにそれほど力が要らないことを実感してもらうために、レッスンでは、私がマウスピースでバズィングしている時に、スロートの先端から出ている息を、生徒の手に当て、その息のスピードが如何に遅いかを確認してもらうことがあります。

そもそも音は音速で伝わります。息のスピードなど関係ないほど早く音速で伝わります。息のスピードに着目するより、唇をいかに効率よく振動させることが出来るかどうかが重要です。

トランペットの小さなマウスピースに、大量な速いスピードの息を送り込むこと自体が困難なのです。

「スピーカーの真ん前にいて、風圧で髪の毛が飛ばされるだろうか?」