長倉穣司 (トランペット奏者) Webサイト

はじめに

効率よく音を出す奏法とは?

より良い奏法とは「効率よく音を出す奏法」と言い換えられます。「効率よく」音を出せるようになるということは、「効率が悪い」状態に比べて様々なことを楽に行えることを意味します。

例えば、大きな音を出したい、音域を広げたい、いい音色で吹きたい、耐久力をつけたいなどといった、個々にかかえている問題があるとします。「効率よく音を出す奏法」を身につけることにより、トランペットを吹くことそのものが楽に行え、これらの問題が一気にすべて解決する可能性があります。

音域を広げたい(多くの場合高い音を出したい)場合、高音ばかりを出す練習をしてもなかなか上手くいかないものです。仮にそれで高音が出るようになったとしても、音色が良くなかったり耐久力がなかったり中低音が痩せたりと、本来はすべて大事な要素なのにむしろ「虻蜂とらず」 *1 の状態になってしまうなんていうことが、しばしばあります。

しかし、すべてを実現できている人もいます。できる人とできない人の差、その大きな要素と考えられるのが、音を出すための効率の問題なのです。

効率よく音を出すための大原則は…

  • 必要最小限の力で吹くこと。
  • 音域にかかわらず同じアンブシュア*2で吹くこと(ダブルアンブシュア*3にならないこと)。
  • アパチュア*4を小さくすること。
  • 舌の活用。

この4点に集約されます。私のレッスンでは、ウォームアップを通じてこれらのことを身につけることが出来るように指導します。この「効率よく音を出す奏法」を身につけることで、トランペットの演奏能力全体が複合的に向上し、「すべてを実現できている人」に近づけるのです。

以下に解説するメニューは日々のウォームアップとして行いますが、それが同時に「効率よく音を出す奏法」を身につけるための基礎練習でもあります。そのメニューと、それを行うにあたっての考え方を順に解説します。

*1 虻蜂(あぶはち)取らず
「虻も取らず蜂も取らず」が簡略化された語。二つのものを同時に取ろうとして両方とも得られないこと。欲を出しすぎると失敗することのたとえ。

*2 アンブシュア
フランス語では歌口(マウスピース)のことをEmbouchure(アンブシュア)と言うが、日本ではアンブシュアとは金管・木管を問わず、歌口(マウスピース)に当てる唇の態勢をいう。実際には唇だけでなく、口の周りの筋肉、アゴや舌の動きなど、全体を指す。

*3 ダブルアンブシュア
低音域と高音域とでアンブシュアを使い分けることをダブルアンブシュアといい、悪い奏法とされている。

*4 アパチュア
金管楽器を吹いているときに、唇の中央にできる空気の通る穴(振動部分)のこと。