音が出ないとき、大切なのはゼロの状態からという原則を守りつつ、音が出るまでじっくり待つということです。

誰しも音が出ないときは何とかして音を出したくなるものです。例えば唇をすぼめたり横に引いたりといった、唇に何らかの力を入れて、いわゆるアンブシュアを「作る」ようなことをしてはいけません。この「作る」作業が「余計な力」を入れることになってしまうことが多々あります。

この最初の段階で「余計な力」を使ってしまうことは、いわば洋服のボタンを掛け違えて進めていくようなものです。そのまま先に進むことは、すでに必要最小限の力で吹くという原則から外れてしまっており、先に進んだ時その余計な力を入れて行ったことを修正するためにさらに余計な力を使うといった、「余計な力の悪循環」に陥ってしまうことになります。(後述「3-(1)余計な力の罪」参照。)

ですから、音が出なくてもアンブシュアを「作る」ことをせず、まずはゼロの状態を心がけ、自然に唇が振動してくれるまで根気よく試します。

音が出ないときは、口を閉じて(ただ閉じる)から、マウスピースを口にあてて、「プッー」の発音と共に、息だけ入れることも試してみると良いでしょう。(まだ、唇を振動させなくてもよいです。)息のスピードは思ったよりもゆっくりで、リコーダーを吹くくらいです。中低音のそれほど音量の大きくない音は、このくらいの息のスピードで鳴るものです。

これは、その感覚をつかむ為のもので、まだ音が出なくてもよいのです。余計な力を使っているかもしれないと思う人は、この状態をよく確かめて、最低限の力を覚えるとよいでしょう。上手くいくとそのまま音が出るかもしれません。

もう一つの工夫として、マウスピースを楽器にとりつけ、チューニング管を外して吹いてみる、という方法もあります。

マウスピースのみの状態より、管がマウスパイプ分長くなるわけですが、管が長くなった分、音が出やすくなる可能性があります。徐々に吹く管の長さを調節し、最終的に音が出ればよいのです。

ただし、マウスパイプの長さはマウスピースより長く倍音の間隔が広いため、あまりいろいろな音を出そうとすると唇に無理がかかるので、注意が必要です。*1

音が出るまでにかかる時間は、千差万別です。人によっても当然違うし、同じ人でも体調や唇の状態(前日の演奏による疲労の度合いなど)によっても違います。体調の良い時、唇の状態がよい時は、比較的すんなりと音が出るかもしれません。一方、寝不足や疲労で体調が悪い日、あるいは前日たくさん吹いて唇がダメージを受けているような場合(唇の振動する部分がまだ腫れている感覚がある時など)、すぐには音が出ないことがあるかもしれません。

すぐに音が出ない時、何とか音を出そうとあせって細工をして=何らかの余計な力を入れて、より一層調子が悪くなってしまう、というのは、スランプに陥るありがちなパターンの一つです。このような時こそ、自然に唇が振動するまで待つということが、非常に重要です。待つことにより、時にはいつもよりウォームアップに時間がかかってしまうようなこともあるでしょう。しかし、ここで大事なことは、あくまでも唇が自然に振動して音が鳴っている状態を作り出すことなのです。

また調子の悪い時 *2 は、音が出ても、雑音の混ざったブツブツした音になってしまうことがあるかもしれません。しかし、やり方があっていれば、すなわち力の入っていない、ゼロの状態ができているのであれば、よしとします。余計な力さえ入っていなければ、いずれ雑音の少ない密度のある音に近づいていく可能性があるからです。

なお、マウスピースの練習はそれほど多くやる必要はないと考えています。マウスピースでの音の出し方は楽器をつけた時とは違うからです。目安としては3分くらいでよいと思います。パターンを決めておき、それをこなすことにしておくとよいでしょう。

*1 マウスパイプでのバズイング
通常、実音D~Esの音が出る。マウスパイプの長さによるため楽器によって違う。

*2 調子の悪い時
普段はマウスピースでのバスィングで音が出るが、調子が悪くてマウスピースのみでまったく音が出ない時などは、無理をせず、チューニング管をはずした状態のマウスパイプでのバスィング、もしくはバズイング自体行わないですぐに楽器で吹くなどの方法を取った方がよい結果につながる。


長倉穣司 (トランペット奏者) Webサイト

2-(4) 音が出ないとき

音が出ないとき、大切なのはゼロの状態からという原則を守りつつ、音が出るまでじっくり待つということです。

誰しも音が出ないときは何とかして音を出したくなるものです。例えば唇をすぼめたり横に引いたりといった、唇に何らかの力を入れて、いわゆるアンブシュアを「作る」ようなことをしてはいけません。この「作る」作業が「余計な力」を入れることになってしまうことが多々あります。

この最初の段階で「余計な力」を使ってしまうことは、いわば洋服のボタンを掛け違えて進めていくようなものです。そのまま先に進むことは、すでに必要最小限の力で吹くという原則から外れてしまっており、先に進んだ時その余計な力を入れて行ったことを修正するためにさらに余計な力を使うといった、「余計な力の悪循環」に陥ってしまうことになります。(後述「3-(1)余計な力の罪」参照。)

ですから、音が出なくてもアンブシュアを「作る」ことをせず、まずはゼロの状態を心がけ、自然に唇が振動してくれるまで根気よく試します。

音が出ないときは、口を閉じて(ただ閉じる)から、マウスピースを口にあてて、「プッー」の発音と共に、息だけ入れることも試してみると良いでしょう。(まだ、唇を振動させなくてもよいです。)息のスピードは思ったよりもゆっくりで、リコーダーを吹くくらいです。中低音のそれほど音量の大きくない音は、このくらいの息のスピードで鳴るものです。

これは、その感覚をつかむ為のもので、まだ音が出なくてもよいのです。余計な力を使っているかもしれないと思う人は、この状態をよく確かめて、最低限の力を覚えるとよいでしょう。上手くいくとそのまま音が出るかもしれません。

もう一つの工夫として、マウスピースを楽器にとりつけ、チューニング管を外して吹いてみる、という方法もあります。

マウスピースのみの状態より、管がマウスパイプ分長くなるわけですが、管が長くなった分、音が出やすくなる可能性があります。徐々に吹く管の長さを調節し、最終的に音が出ればよいのです。

ただし、マウスパイプの長さはマウスピースより長く倍音の間隔が広いため、あまりいろいろな音を出そうとすると唇に無理がかかるので、注意が必要です。*1

音が出るまでにかかる時間は、千差万別です。人によっても当然違うし、同じ人でも体調や唇の状態(前日の演奏による疲労の度合いなど)によっても違います。体調の良い時、唇の状態がよい時は、比較的すんなりと音が出るかもしれません。一方、寝不足や疲労で体調が悪い日、あるいは前日たくさん吹いて唇がダメージを受けているような場合(唇の振動する部分がまだ腫れている感覚がある時など)、すぐには音が出ないことがあるかもしれません。

すぐに音が出ない時、何とか音を出そうとあせって細工をして=何らかの余計な力を入れて、より一層調子が悪くなってしまう、というのは、スランプに陥るありがちなパターンの一つです。このような時こそ、自然に唇が振動するまで待つということが、非常に重要です。待つことにより、時にはいつもよりウォームアップに時間がかかってしまうようなこともあるでしょう。しかし、ここで大事なことは、あくまでも唇が自然に振動して音が鳴っている状態を作り出すことなのです。

また調子の悪い時 *2 は、音が出ても、雑音の混ざったブツブツした音になってしまうことがあるかもしれません。しかし、やり方があっていれば、すなわち力の入っていない、ゼロの状態ができているのであれば、よしとします。余計な力さえ入っていなければ、いずれ雑音の少ない密度のある音に近づいていく可能性があるからです。

なお、マウスピースの練習はそれほど多くやる必要はないと考えています。マウスピースでの音の出し方は楽器をつけた時とは違うからです。目安としては3分くらいでよいと思います。パターンを決めておき、それをこなすことにしておくとよいでしょう。

*1 マウスパイプでのバズイング
通常、実音D~Esの音が出る。マウスパイプの長さによるため楽器によって違う。

*2 調子の悪い時
普段はマウスピースでのバスィングで音が出るが、調子が悪くてマウスピースのみでまったく音が出ない時などは、無理をせず、チューニング管をはずした状態のマウスパイプでのバスィング、もしくはバズイング自体行わないですぐに楽器で吹くなどの方法を取った方がよい結果につながる。